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2009年5月 8日 (金)

「渚にて」雑記1

読み終わってから例によってごちゃごちゃ書いているうちに、本筋とは関係ないネタが出てきました。
こういうネタは
こちらに落書きします。

   《スコーピオン》について
 アメリカ原子力潜水艦です。ドワイト・ライオネル・タワーズ艦長が指揮を執るアメリカ海軍の潜水艦。
 トン数も武装もなにも書いてありません。作者はおそらくモデルにした艦があったとは思いますが、ミリタリー・マニア向けにスペックをしっかり書く必要のない話でもあり、要目ははっきりしていません。
 アメリカ海軍には《スコーピオン Scorpion》という潜水艦はあります。 →USS Scorpion (SSN-589)
Uss_scorpion_ssn589 不幸にも事故により失われた潜水艦の一隻で、整備不良のまま出航したという記述もあり、当時のアメリカ海軍の過酷な哨戒任務の犠牲になったのであれば、忸怩たる思いの人もいるのでしょうか。
 ところで、小説「渚にて」の紹介などには、まことしやかにこの艦のことだとなっているものもあります。英語版のWikiにまでそう書いてあるのには笑った。
 この艦は、 (以下、hush氏の近代海軍艦船辞典 「スコーピオン」より)

 1958/8/20起工。1959/12/19進水。1960/6/29(?) スキップジャック級原子力潜水艦3番艦として竣工。
 水中排水量3500トン。艦長Norman B. Bessac中佐。
 1968/5 アゾレス諸島近海付近で乗員99名を乗せたまま行方不明。同月29日遭難確実と公表される。

 という経歴なのです。この本が出版された1957年当時、まだ存在していなかったのです。
 アメリカ海軍には、その前に《スコーピオン》という潜水艦は第二次大戦中に大量生産されたガトー級潜水艦にもその名はありますが、由来ではないでしょうね。これは戦果も特筆するほどはなかったし、なにしろガトー級は195隻も建造されました。
 ネビル・シュート氏が、どこからこの艦名を付けたのかはわかりません。

 映画で「渚にて」(1959年公開)が作られました。ニコニコ動画に上がっていたので、何年ぶりかで見直しました。→「渚にて」
On_the_beach ここでは、実際の潜水艦が撮影用に使われています。これに付いている艦番号は623なんですよ。調べてみるとこの番号はネイザン・ヘイル(SSBN-623 Nathan Hale)に割り当てられています。、
 ネイザン・ヘイルは、ラファイエット級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦の6番艦です。つまり、小説で描写された《スコーピオン》のように、警戒・偵察などに使われるタイプのものと違い、7200トンにも達する超大型潜水艦です。これは1963/11/23に就役ですから、映画撮影当時は存在していません。
 撮影に使われた潜水艦は、艦形もいわゆる涙滴型ではなく、原子力潜水艦でさえないようですね。

 もう一つ 空母《シドニー》について。
Hmas_sydney 本の中で、《スコーピオン》が係留されている航空母艦です。映画ではエセックス級らしい艦が使われていましたが、本物の《シドニー(HMAS Sydney, R17/A214)》は、元イギリス海軍のマジェスティック級航空母艦2番艦だそうな。建造中にオーストラリア海軍に売却され、第二次大戦後の1948年に就役し、朝鮮戦争で武勲を建てたそうな。1958/5/30に予備役になり1962年に高速輸送艦として再就役したそうですから、当時燃料も底を突いて、アメリカ海軍用の居住艦となっていたという設定も問題なしかな。
 この空母《シドニー》は、《スコーピオン》と共にポート・フィリップ湾の北側にあるメルボルンのウィリアムズタウンに係留されています。
 けっこう作者の設定はしっかりしているようです。

 いや、単なるメモですよん。

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コメント

 hush猊下、わざわざどうも。(,⌒-⌒) v
 いつもお世話になっております。(ロハでw)

>本当に素敵な小説ですよね。
 旧訳を読んでいたとき、ピンと来なかったいろいろなことが、今回の訳で改めてわかってきましたっけ。訳者の個性があるのでしょうけれど、同じものを翻訳してこうも違うのかと驚きました。昔より少しわかってくると、あのレースのシーンのリアルさなどがわかってきます。

 我田引水もいいところなのですが、自分のサイトで書いた 「ピンと張り詰めたぬるさ」 という言葉が、このお話には一番良い形容かもしれないなぁと、自分では思っております。

 二番目のリメークのものは、前に放映したはずなのですが見のがしました。今度いつ放映するのかわかりませんが見のがさずに見たいものです。(何やら、批判が多いようですがw)

 最初の映画、シュート氏は気に入らなかったそうですね。たしかにぼくも見ていまして、最後の方のいちシーン、モイラとドワイトが何をしたかについての描写が、ちょっと引っかかりました。シュート氏はどこが気に入らなかったんでしょうかねぇ。

投稿: 鐵太郎 | 2009年5月11日 (月) 19:43

 御利用多謝。
 「渚にて」って、本当に素敵な小説ですよね。ああ言う静かな小説って最近はあまり見かけませんから、よけいに懐かしいです。
 また、最後のメルボルン・グランプリのシーンが好きなのですが、ネヴィル・シュート自身がレーサーであったと知って、それであれだけ臨場感に満ちた場面を書けたのだと思い至った次第であります。

 映画の方は観ておりませんが、スコーピオンではなくソーフィッシュSawfishの名で登場するようです。そして、同艦役で登場したのはイギリスの潜水艦アンドルーAndrewだそうです(リンク先を御覧下さい)。
 監督はアメリカ海軍に支援を求めたようですが、断られたようです。アメリカの潜水艦があのような最期を遂げるような、しかもイギリス人の書いた小説が原作のものに…と言うような事もあったのでしょうが、冷戦時代で原子力潜水艦は貴重な存在であってそんな映画に回すような余裕はなかったのでしょうね。
 2000年にテレビ映画としてリメークされたようですが、この時にはロサンジェルス級原子力潜水艦(SSN704)チャールストンという架空の艦が主役のようです。このチャールトンを踊ったのが誰かは私は知りません(フレッド・アステアではないのは確かです)。
 お邪魔しました。
 

投稿: hush | 2009年5月11日 (月) 18:27

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