南進、北進?
中学校の頃だと思うのです。二階建ての社宅にいた頃だから。
息子に自分の話をあまりしない親父が、珍しく若い頃の夢の話をしました。
二階にあった本棚の奥から、馬来語辞書なるものが出てきたのがきっかけです。馬来とはなんぞやというと、マレーのことだそうな。なんと、親父殿は若い頃、南の国に打って出ようと思ってマレー語を勉強したことがあるのだそうな。
山下将軍がマレーを進撃したのに感激したらしい。
とうさんがな、お前ぐらいの年の頃だったよ。
南の国で一旗揚げようかと思ったものだ。
ま、そのあと気が変わったけどね。
ふうん。
そのあと親父は、いつものように自分の世界に入って歌をうたいながら階段を下りていきました。
うちの中だと、ところかまわず歌をうたう人だったんですよ。
♪えんえんきたにさんびゃくり とうあのぶんかすすめゆく
はい、ここで笑った人、ヲタクです。(何の?w)
えーと、まず突っ込むところは、山下将軍がマレーに進軍した時の親父の年齢は、当時の鐵太郎の年齢と5歳以上違っていたのですが、まあそこはいい。
問題は、この歌がはるか北の大地、満洲の歌だったと言うこと。
どう考えても、南方のマレーに憧れた昔を思い出して歌っているはずなんですけどね。
そりゃ、北進じゃないか。(爆)
この歌も親父殿のお気に入りのひとつでした。
先日、呆けていた親父がそれらしい鼻歌で歌っていたので、何かほっとしたのを思い出します。
この歌が何の歌なのか、当時は知りませんでした。ネットで検索出来るようになって、ようやくわかりました。
独立守備隊の歌 という題です。なんと土井晩翠の作曲なのだそうな。
満鉄、つまり南満洲鉄道の警備を行っていた日本軍の軍歌らしい。
独立国であるはずの満州国で、なぜ満鉄という日本の国策会社があり、なぜ日本の軍隊が体を張って警備をしているのか、いろいろ思うところもあります。
満州国では、日本陸軍の軍人の許可なしには、満州国の官吏は、皇帝その人でさえ、鼻をかむことすら出来なかったといわれます。これを怒り狂って否定する奇妙なネトウヨさんがいましたが、これは事実に限りなく近い事例ですよね。
歴史は、奇妙で面白い。
さて、こんな歌です。
この歌詞で、
♪南満洲鉄道の 守備の任負ふ 我が部隊
というところがあります。
ここを昔、親父の歌声だけを脳内解釈して、
♪南満洲鉄道の 修理の荷負う 我が部隊
だとずっと思ってました。鉄道会社の保全関係の歌なのかなぁと。
いや、ただそれだけ。
面白いね。
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コメント
☆hush猊下
こんばんは。
よんどころない事情によりへたっております。(年だな)
昔の少年は、夢があったのですねぇ。
今の子どもたちに。大人になって大陸を開拓したいかと聞いたら、ほぼ全ての子が首を横に振るでしょうなぁ。世界は大きくなったのか小さくなったのか。
ああ、うちの親父どの、活力を取り戻してもらいたいけど、もう無理でしょう。あの人見知りする性格で、人の倍ぐらいは生きた人だから、もう十分燃えたんじゃないかな、などと思っています。
呆けたので、不肖の息子に苦々しい思いをすることもない今が、不肖の方の息子としてはありがたかったりします。(あは)
投稿: 鐵太郎 | 2010年11月18日 (木) 22時07分
うちの父親は馬賊にあこがれたと言っておりました。
ですから、地球博に行った時だったと思いますが、モンゴル館にパオが置いてあったのを見て、妙に懐かしく思ったのですが、これは刷り込みですね。
御父君がいつまでも御壮健であられますよう願っております。
投稿: hush | 2010年11月17日 (水) 23時38分