無題(作・夏目漱石 大正5年11月19日)
無題
大愚難到志難成 大愚到り難く 志成り難し
五十春秋瞬息程 五十の春秋 瞬息の程
觀道無言只入靜 道を観んとして言無く 只だ靜に入り
拈詩有句獨求淸 詩を拈らんとして句有り 独だ清を求む
迢迢天外去雲影 迢迢たり 天外 去雲の影
籟籟風中落葉聲 籟籟たり 風中 落葉の声
忽見閑窗虚白上 忽ち見る 閑窓 虚白の上
東山月出半江明 東山 月出でて 半江明らかなり
ひどく愚かな者は悟りに達せず
五十の歳月はまたたく間
道を見きわめようとしてことばなく ただ静寂に
詩をひねり出して句があり ただ清らかさを求める
はるか遠く 空のかなたに去りゆく雲のかたち
ヒューヒューと 風のなかの落ち葉の音
ふと見る 人のいない窓 しずかな部屋
東の山に月がのぼり 川は中ほどまで明るい
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